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▷ 公式サイト
https://saitomememe.com/
#聖獣 #朗読小説 #斉藤めめめ
朝の給餌が終わったばかりの竜舎の通路で、竜騎士団長の夫は離縁を告げた。隣には、飛べる従騎士の娘。十二年、夜明け前に三十一頭の寝息を数えてきた妻は、手の中の布巾をそっと置く。
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
「わかりました」
「……それだけか」
リディアは孤児院の出。十四歳で老竜の歯痛を聞き取り、以来この国でただひとりの「調律者」として、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、竜と騎士の契約を編んできた。竜は人を乗せない生き物。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。夫は十二年、机の上に置かれる「厩の報告」を誰が書いているか、考えたこともなかった。「地を這う者」と言われ、「明日までに出ていけ」と言われ、彼女は一頭ずつに別れを告げて、振り返らずに門を出る。
リディアは何もしない。夫の相棒竜ヴェルグが喉の奥で唸りを溜めても、首をほんの少し横に振って止めるだけ。三日後から、竜は一頭も飛ばなくなった。鞭にも動かず、従騎士が挨拶の形を真似ても動かない。形は写せても、十二年の会話は写せない。使者に理由を問われて、彼女は答える。「寂しいからです」。怒っているのではない。竜は報復をしない。そして来月は、三年に一度の契約更新日。
更新の日、三十一頭は空へ上がり、国を出て北の谷へ向かう。竜語学者も服従の術も役に立たなかった。谷には調律院が建ち、動物の気持ちがわかると言って笑われた子たちが集まり、王国の職員名簿に初めて「調律者」の職名が載る。解任された元夫からは、厩の報告十二年分を読んだ手紙が届き、彼女は返事の代わりに推薦状を書く。
当たり前の顔をした仕事が消えたとき、初めて世界が止まる。見えない仕事に名前がつくまでの、静かな逆転の物語です。
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈見どころ┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
・竜舎の通路での離縁。「地を這う者」と言われて、冬の夜明け前に竜の腹の下を這った十二年を思う
・首をほんの少し横に振るだけで、相棒竜の唸りを呑ませる合図。十二年かけて二人で作った、いちばん大事なひとつ
・『おれの騎士は、おまえだと思っていた』。三十一頭、一頭ずつの別れと、振り返らずに出る門
・「寂しいからです」。国境の危機の説明としては報告書に書けない、けれどこれ以上正確な言葉がない答え
・契約更新日、三十一頭がどこへ飛ぶか。そして焚き火の夜、ヴェルグが語る、人間が六十年読み違えていたこと
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈登場人物┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
・リディア … 竜騎士団長の妻、三十一歳。深緑の髪。孤児院の出で、十四歳で老竜の歯痛を聞き取って以来、この国でただひとりの調律者。竜は大きな音が嫌いなので、十二年、声を殺して暮らした
・ガレス … 夫。無敗の竜騎士団を率いて十二年、この国で最も高い場所を飛ぶ男。「誰も落とさない空を作りたい」と言った青年だった
・イレーネ … 従騎士、二十二歳。竜舎で働いて三年、いつも夫の背中を見つめていた娘。竜への扱いは丁寧で、リディアはそれを記録している
・ヴェルグ … ガレスの相棒竜。深緑の鱗に金色の目。右の奥歯の手入れを、この世でいちばん嫌がる
・タリス … 片目が白い老雌竜。別れ際に、食事の心配をする
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈チャンネルについて┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
小説家・斉藤めめめが書き下ろした小説を、著者本人が朗読・動画化しています。
竜と調律者、見えない仕事の物語、竜が飛ばなくなる逆転。一本ごとに別の人物と結末です。
チャンネル登録・高評価・コメントが、次の物語を書く励みになります。
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈コメントで教えてください┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
あなたの心に一番残った場面は、どこでしたか?
あなたの周りで「机の上に生えてくる」と思われている仕事を、誰がしているか知っていますか?
ぜひコメントで聞かせてください。
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈制作┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
原作・脚本
斉藤めめめ(書き下ろし)
朗読
斉藤めめめ(本人の声をもとにした音声合成)
絵
AI画像生成(制作ツールとして使用)
構成・編集・確認
斉藤めめめ
※概要欄のリンクはAmazonアソシエイトのリンクです。ここから購入していただくと、価格はそのままで、わずかな紹介料がチャンネルの活動費になります。
(Amazonのアソシエイトとして、斉藤めめめは適格販売により収入を得ています。)
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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朝の給餌が終わったばかりの竜舎の通路で、竜騎士団長の夫は離縁を告げた。隣には、飛べる従騎士の娘。十二年、夜明け前に三十一頭の寝息を数えてきた妻は、手の中の布巾をそっと置く。
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
「わかりました」
「……それだけか」
リディアは孤児院の出。十四歳で老竜の歯痛を聞き取り、以来この国でただひとりの「調律者」として、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、竜と騎士の契約を編んできた。竜は人を乗せない生き物。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。夫は十二年、机の上に置かれる「厩の報告」を誰が書いているか、考えたこともなかった。「地を這う者」と言われ、「明日までに出ていけ」と言われ、彼女は一頭ずつに別れを告げて、振り返らずに門を出る。
リディアは何もしない。夫の相棒竜ヴェルグが喉の奥で唸りを溜めても、首をほんの少し横に振って止めるだけ。三日後から、竜は一頭も飛ばなくなった。鞭にも動かず、従騎士が挨拶の形を真似ても動かない。形は写せても、十二年の会話は写せない。使者に理由を問われて、彼女は答える。「寂しいからです」。怒っているのではない。竜は報復をしない。そして来月は、三年に一度の契約更新日。
更新の日、三十一頭は空へ上がり、国を出て北の谷へ向かう。竜語学者も服従の術も役に立たなかった。谷には調律院が建ち、動物の気持ちがわかると言って笑われた子たちが集まり、王国の職員名簿に初めて「調律者」の職名が載る。解任された元夫からは、厩の報告十二年分を読んだ手紙が届き、彼女は返事の代わりに推薦状を書く。
当たり前の顔をした仕事が消えたとき、初めて世界が止まる。見えない仕事に名前がつくまでの、静かな逆転の物語です。
*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈見どころ┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
・竜舎の通路での離縁。「地を這う者」と言われて、冬の夜明け前に竜の腹の下を這った十二年を思う
・首をほんの少し横に振るだけで、相棒竜の唸りを呑ませる合図。十二年かけて二人で作った、いちばん大事なひとつ
・『おれの騎士は、おまえだと思っていた』。三十一頭、一頭ずつの別れと、振り返らずに出る門
・「寂しいからです」。国境の危機の説明としては報告書に書けない、けれどこれ以上正確な言葉がない答え
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*。⑅୨୧┈┈┈┈┈┈┈登場人物┈┈┈┈┈┈┈୨୧⑅*。
・リディア … 竜騎士団長の妻、三十一歳。深緑の髪。孤児院の出で、十四歳で老竜の歯痛を聞き取って以来、この国でただひとりの調律者。竜は大きな音が嫌いなので、十二年、声を殺して暮らした
・ガレス … 夫。無敗の竜騎士団を率いて十二年、この国で最も高い場所を飛ぶ男。「誰も落とさない空を作りたい」と言った青年だった
・イレーネ … 従騎士、二十二歳。竜舎で働いて三年、いつも夫の背中を見つめていた娘。竜への扱いは丁寧で、リディアはそれを記録している
・ヴェルグ … ガレスの相棒竜。深緑の鱗に金色の目。右の奥歯の手入れを、この世でいちばん嫌がる
・タリス … 片目が白い老雌竜。別れ際に、食事の心配をする
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原作・脚本
斉藤めめめ(書き下ろし)
朗読
斉藤めめめ(本人の声をもとにした音声合成)
絵
AI画像生成(制作ツールとして使用)
構成・編集・確認
斉藤めめめ
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